デジタル加飾のエキスパートTaktiful社のケビン アバジェル氏がデジタル加飾の現在・未来について語ります。

2022-01-06:デジタル加飾記事紹介(ポストプレス マガジン誌2021年12月記事引用)

Taktiful社 マーケティング・コンサルタント、 ケビン アバジェル氏

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デジタル装飾・加飾は、印刷物に物理的、視覚的、触覚的な効果を加えるとともに、可変データを使用可能にするために利用されるプロセスです。このQ&Aでは、それぞれの真の定義、最適なアプリケーション、将来の可能性について説明します。

デジタル装飾・加飾の本当の定義と、デジタル処理で可能な装飾・加飾の種類とは?

どちらの言葉も、さまざまな意味を含んでいます。素晴らしいことに、この分野のテクノロジーは非常に速く進歩しているため、デジタル装飾の定義も常に変化しています。私は、デジタル加飾を、データの可変性と小ロットでの大幅なコスト削減を可能にする技術を使って、印刷物に物理的、視覚的、触覚的効果を加えて強化するプロセスであると定義しています。

デジタル加飾技術にはさまざまな種類がありますが、そのどれを活用するかは、それを必要とする印刷会社、ブランド、広告代理店の予算、求める効果、技術的な制約、環境への配慮等の違いによります。

デジタル加飾で最も古く、良く知られているものの一つが、デジタル印刷機の黒色トナーをラミネーターで再溶解する「ヒートローラー加工」です。ラミネートロールの代わりに、箔のロールを装填して使用します。

黒のトナーが熱で溶けて箔が付着し、黒で印刷した部分が金属化されるのです。箔押しやメタリックカラーなど、さまざまな効果を得ることができます。しかし、この箔を全体的なCMYK+デザインの一部にするには、デジタル印刷機で何度もパスを重ね、非常に高い見当精度を実現し、ステップ間にラミネート加工などを入れる必要があります。

また、ヒートローラー加工の出力は、一般的に「フラット」になり、立体的に盛り上がることはありません。必ずしも効率的なプロセスとは言えず、印刷に時間がかかり各パス毎にクリックチャージがかかりますが、参入コストが低く、加飾を試してみたいという人には最適な方法といえます。

そして、10年程前に登場したのが、インクジェットを使ったシステムです。インクジェット方式は、まず印刷されたシートに透明なインクを噴射して、スポットUVを再現することから始まりました。その数年後、レイヤーを増やしたり、スピードを落としたりすることで、立体的な効果を得るというアイデアが生まれ、触覚的な加飾が行われるようになりました。さらに数年後、特定の液体を特定の方法で調合することで、液体自体が箔製品の接着剤の役割を果たすというアイデアが生まれました。その結果1つの技術で、フラットなスポットUVニス、盛り上がったクリアな触感の効果、盛り上がった箔の効果、すべてを1パスで、最小ロット1枚から作成することができるようになりました。

これにより、デジタル加飾は、アーリーアダプターからアーリーマジョリティへと一気に普及が進みました。多くの新しいプレーヤー、新しいフォーマット、新しいプラットフォーム、そしていろいろな価格帯の製品の登場によりデジタル加飾がマスレベルで使われるようになりました。

今日の市場で比較的新しく、エキサイティングなのは、完全にデジタル化された印刷後加工システムに向けた次の論理的ステップです。印刷、ニス塗り、箔押しがデジタルでできれば、残るは抜き加工だけです。幸いなことに、レーザーとインスタントポリマー型により、極めて高い精度とインパクトで完全なデジタルカッティングワークフローを可能にする新しい技術が市場に出てきています。

今日私たちは、「情報提供」を目的とする印刷物がデジタルに移行していく一方、デジタル加飾技術が使いやすくなったことにより、印刷加飾市場のルネッサンスとでもいうべき現象が起こっていることを目の当たりにしています。情報印刷物とは対照的に、多くのブランドでは印刷予算を「インパクトのある」印刷物に使うようになっています。またデジタル印刷への加飾が、従来のアナログ加飾技術のボリュームを増加させ、これらの新しい仕上げ加工への関心を再び呼び起こしたことは非常に興味深いことです。

デジタルインクジェットのコーティングや箔を使用する際の制限や、起こりうる課題は何でしょうか?また、その課題はどのように解決されるのでしょうか?

デジタルインクジェット用コーティング剤や箔を使用する際に直面する大きな課題は、印刷物表面のダインレベル(濡れ性)を最適化し、シートとの密着性を高め、滑らかで濡れたような美しい外観を得ることです。

ダイン値の違いを克服するために、特定のインクやトナー出力に適合する特殊な液体ポリマーを開発したメーカーもあります。また、インクジェット処理前のダイン値を最適化するために、インラインコロナユニットを導入しているメーカーもあります。

これらの課題を克服する最も簡単な方法は、シートとの強い接着力を持つ適切なラミネートやコーティングを使用し、加飾を施す前に印刷物をラミネートするか全面UVコーティングすることで最適なダイン値を確保することです。しかし、この方法には、経済的・環境的なコストがかかります。

もうひとつ、よく聞かれるのが、インクジェットの加飾システムを非コート基材に対応させるにはどうしたらいいかということです。正直なところ、これは物理に逆らうことになります。どんな液体でも、コーティングされていない基材の上に置くと、それが機能すると期待するのは、スポンジに水を注いで、それが吸収されないことを期待するのと同じことです。とはいえ、優れた最終製品を得るための回避策はいくつかありますが、従来の箔押しとそれに適切な非コート紙との組み合わせと同じ品質を実現することはできません。

インクジェットが使えて見た目は非コート、手触りも非コートの紙を手に入れることができますが、実際はコーティングが施されています。これらの非コート紙でも技術やシートによっては、ディテールやベタをどこまで表現できるか、使い方に制約があることもあります。製品化する前によくテストして、その限界を知る必要があります。

また、トナー層を置くことでインクが紙に吸収されるバリアとする使い方もあります。デジタルトナーの中には、液体とシートの間にシールとして機能するものもありますが、使う前に多くのテストが必要となります。

最後に、ニスが染み込まないようにプライマーで下塗りすることもできますが、お客様が求める紙の見た目や質感が損なわれてしまう可能性があります。

デジタル加飾に携わる企業が、印刷物への加飾のメリットをマーケティングし、お客様に伝えるためにはどのような提案があるのでしょうか。

最近デジタル加飾機器に投資した企業へはまず、その企業の顧客や他の人にどのような特定の機器を購入したかを伝えるのをやめるよう提案しています。デジタル加飾装置を購入した企業は、下調べをし、デモに出かけ、他のユーザーを訪問し、主要な顧客数社にアイデアを提案し、目もくらむばかりの新しい技術の導入に踏み切ったのです。ですから、どんな機械に投資したかを具体的に伝える必要はなく、自信を持って単にデジタル加飾の技術を持っていることを売り込めばいい、と思います。

というのは、企業が潜在的な顧客にどのような機械を購入したかを伝えるたびに、顧客は同じ機械を持っている他の企業を簡単に見つけ、最も安い価格で仕事を入札することができるようになるからです。CMYK印刷のコモディティ化から学んだ残酷な教訓が、すべてのものの頂点にある「価値」をなにより優先させるべきことだ、と教えてくれるはずです。同じ過ちを繰り返す必要はないのです。

印刷会社や印刷後加工の会社がブランドや代理店と話をする際に提供すべきものは価格ではなく価値です。伝統的なものであれデジタルであれ、どんな種類の加飾加工を販売しているかに関わらずです。ノウハウは価値であり、秘伝のソースを秘密にすることが、コカ・コーラやマクドナルドを今日のようなブランドにしています。秘伝のソースを手放さず、そのノウハウを強力な武器として活用し、既存および新規の顧客層にアップセルやクロスセルを行うのです。

見込み客が加飾されたサンプルを見たとき、それどのように加工したかを共有する義務はないと思います。印刷物に何らかの加飾を施す場合、印刷業者や印刷後加工業者は、それを特別なブランド技術として売り込み、ターゲット顧客に与える影響から、ROIを正当化できる理由を説明することができます。

私は、デジタル加飾技術の具体的な「ブランド」名を考え、そして非常に重要なことですが、その名前に商標権を持たせることを勧めています。 ブランド名が何であるかは問題ではなく、その技術が独自の技術としてブランド化されているということが重要です。これは、コールド箔やレーザーカットなど、他の加飾プロセスにも応用できます。

覚えておいてほしいのは、ある企業のデジタル加飾技術に特別なブランド名がある場合、それはそれを提供する企業が所有するものとしてブランド化されており、商標権があり、そのブランド名で販売され、商標権のあるブランドで入札が終了すると、入札はブランド名を作成した企業に行くということです。

デジタル加飾プロセスでは、今後どのような用途や技術が想定されるのでしょうか。

装置の高速化、低コスト化が進むにつれ、私は近い将来デジタルとアナログの損益分岐点(印刷ロット数)が高くなることを予想しています。

第二に、インダストリー4.0では、デジタル印刷、デジタルスポットUV、デジタル箔、デジタルダイメンション、デジタルカット・筋入れを一つのプラットフォームに統合し、ライトアウトマニュファクチャリング(完全自動製造)を実現することができると考えています。

最後に、デジタル加飾印刷機の次の大きな進化は、プリンテッドエレクトロニクス技術を使ったスマートな「コネクテッドペーパー」だと考えています。これは、小売店のパッケージやダイレクトメールに重大な影響を与えると同時に、IoTペーパーに起因するプライバシーやデータ使用に関するいくつかの強い問いを我々に突きつけることになるでしょう。

ケビン・アベルゲル氏について

ケビン・アベルゲルは、グラフィック・コミュニケーション業界で17年の経験を持つベテランです。MGI の印刷加飾製品ラインの最適化において、多くの役割を担ってきました。彼はそのキャリアを通じて、印刷加飾のデジタル化の熱烈な支持者であり、現在はタクティフルコンサルティングで無限の可能性に満ちた新しい挑戦をすることを楽しみにしています。

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