デジタル加飾の見積もりには、複数の考慮すべき要素があります。

2022-10-27 :デジタル加飾トレンド情報(2022年9月PrintingNews記事引用)

米国Taktiful社のKevin Abergel氏が各社の見積もり担当者をインタビューし、デジタル加飾で考慮すべき要素を明確にしていきます。

デジタル加飾の見積もり

印刷物に加飾を施し、人目を引く効果を得ることは、印刷の黎明期にまでさかのぼる歴史があります。現存する暗黒時代の写本には、現在の印刷会社が再現するのが難しいような、手作りの装飾が施されているものがあります。

手作業であれ、機械化されたものであれ、あるいは今日ますますデジタル化されているものであれ、こうした効果を生み出すには、基本的なプリント(あるいは原稿)に加え、常に費用がかかるものでした。時間がかかり、通常の染料よりも高価な材料を使用することもあります。しかし、そのようなコストを事前に正確に見積もるにはどうすればよいのでしょうか。どうすれば、顧客を怖がらせたり、または損失を被ったりすることなく、見積書を作成することができるのでしょうか。

Taktiful社の目標は、デジタル加飾のプロデューサーやスペシャリストが、これらの新しいテクノロジーの商業的・美的魅力を理解するだけでなく、生産とコスト計算の現実も理解できるように支援することです。

デジタル加飾加工は、コストと見積もりの仕方を変えました。インクジェットシステムの設備投資は、従来の箔やエンボスに使われていた凸版印刷の機械よりはるかに高いのですが、ランニングコストは従来機とは異なります。UVニスは1枚ずつ必要ですが、金型代や時間のかかる版下作製はいらず、これらのコストを回収する必要もありません。また、従来の加飾加工とは異なり、デジタル加飾では経済的に小ロット生産が可能で、また可変データやパーソナライズが可能なため、1枚1枚を異なるものにすることができます。

見積もり担当者の視点

私たちは、米国のいくつかのデジタル加飾サイトの見積り担当者に、インクジェットベースのシステムのコストをどのように予測し、割り当てているかを聞き、そのポイントのいくつかをMISの開発者に聞いてみました。インタビューした見積もり担当者は全員MGI JETvarnishシステムを使っていましたが、Scodix、Duplo、Kurzが提供する同等のインクジェット加飾機でもワークフローやコスト計算・見積もりプロセスはほとんど同じだと思います。

ボーエン・グリフィット氏は、ミズーリ州カンザスシティにあるポストプレス・スペシャリティーズ社の見積もり主任兼オフィスマネージャーです。同社は、従来の箔加工やエンボス/デボス加工に加え、フォルダグルー、製本、メーリングサービスを提供する印刷仕上げの専門企業です。同社のデジタル加飾は、MGI JetVarnish 3D EvolutionとiFoilで行われています。

見積もり説明2

「お客様はデジタル加飾でも、従来のUVニスや箔のように画像領域の面積やブロック単位で価格を設定するものだと思い込んでいるようです」とグリフィット氏は言います。

デジタルの見積もりは違います。

「重要なのは、見積もりをする前にデータファイルを入手することです」と彼は言います。「銅製の金型を使った従来のフラットな箔押しでは、平方センチ単位でコストを計算し、箔も平方センチで計算することになります。しかし、デジタル加飾では、必ずしもそうではありません。主にニスの消費量に基づいて計算します」。

従来のエンボス加工とは異なり、複数層による高さの積み上げが、コストとスピードの両方に影響します。

ポストプレス・スペシャリティーズ社の見積もりは、カスタム化したFileMaker Proデータベースシステムを使用して処理されます。

「クライアントからデジタル加飾用の実際のファイルを受け取ると、MGIに付属しているニス消費量と実行速度の計算機を使います」とグリフィット氏は言います。「1時間に何枚印刷され、ミクロンレベルでの厚みからどれだけのニスが消費されるかがわかります。また、この作業ではエンド・ツー・エンドのプルーフィングも行っています」。

アートワークの準備方法に関するお客様の知識はまちまちです。

「私たちは、他の同業者よりもデジタル加飾を多く購入している顧客を抱えていると思います」とグリフィット氏はいいます。「これらデジタル加飾を受け入れている人たちは、正確な見積もりのために必要なことをより敏感に感じ取っているのです」。

”Less is More” 少ない方がより良いこと

また、まだノウハウを学んでいる人もいます。

「デジタルUVニスで30%のカバー率で、というクライアントがまだ結構いるんです」とグリフィットは言います。「デジタル加飾を理解していれば、”Less is More” 少ない方がより良い結果を得られることを知っています。本当にハイライトしたい領域にだけUVニスを使うことで、コントラストを高められます。つまり、より少ない消耗品で、より美しい仕上がりを実現することができるのです。デザイナーにそれを教えることが、デジタル加飾の成功と普及につながる重要なポイントだと思います」。

基材の選択は、生産性やコストにも影響する。

「名刺に加飾を施したいと考えている人に、非塗工紙ではうまくいかないと説明するのは大変なことです」とグリフィット氏は言っています。「伝統的に名刺には非塗工紙を使うのがふつうでしたから。デジタル加飾を低コストで施し、より価値のあるものにするために、マットコーティングを施した用紙を使うよう説得するのは、なかなか難しいことなのです」。

ポストプレス・スペシャリティーズ社は、ダイレクトメールの仕事にパーソナライズされた加飾を提供していますが、その機能をどのように見積もるのが良いのか、まだ定まっていません。

「つい最近まで存在しなかった製品に、どうやって課金するんだ?」と彼は言います。「バリアブルデータのエンボス箔にどう課金するか?正直なところ、これ以上請求することはありません。ファイルのセットアップに少しお金がかかりますが、それ以上は請求していません。私たちは、本当は請求できることをしていないのです」。

デジタル加飾は確かに努力する価値があります。

「従来の加飾でも十分な利益が得られますが、もしお客様がデジタル加飾用に正しいアートワークを準備してくれれば、非常に大きな利益が得られます」とグリフィットは述べています。「重要なのは、デジタルデータで作品を準備し、4色カラー版とUVマスクファイルを作成し、less-is-more、keep it-simple のコンセプトで、より速く、より少ない消耗品で印刷できるように、人々にメッセージを送ることです。そうすることで、より速く、より少ない消耗品で生産することができるのです。そのような状況で、私たちは良い利益を上げることができます」。

ブランクを埋める

最近まで、チェルビイ・コタ氏はアリゾナ州の印刷会社で見積もり担当として働き、過去5年間はMGI JETvarnishシステムでデジタル加飾に携わっていました。

「加飾の見積もりは、通常の印刷物とは全く異なるものでした」と彼女は言っています。「印刷物の見積もりソフトを使い、Excelのワークシートに組み込まれた計算機能を使って、加飾の価格を算出しました。シートサイズを記入し、ミクロン単位の厚さ、カバー率、箔の色を記入します。箔は色によって価格もさまざまでした。5人の見積もり担当者がいましたが、デジタル加飾の見積もりを担当したのは、少し複雑だったため、2人だけでした」。

見積もり説明1

コタ氏は、プロダクションマネージャーのケン・フイゼンガ氏と一緒に、実際のコスト見積もりに磨きをかけていきました。

「私は、Excelのスプレッドシートの中で、それらの要因を微調整するのを手伝ったものです 」と彼女は言いました。「本当の無駄は何なのか、計算する必要があるものとないものを見極める必要がありました。しばしばスプレッドシートに入れるデータを細かく管理しようとします。私はそれを単純化したかったのです」。

「12インチや18インチのシートの場合、箔の引き回しは最長で18インチになります。箔は加飾コストの中ではそんなに高額ではありません。1枚あたり6〜10セントになります。ですから、1枚のシートの半分しか箔が必要ないからといって、そのコストをさらに削ることは、全体から見れば無意味なことのように思えます。私の仕事は、できるだけ簡単に、大まかな金額を把握することです。でも、あくまでも目安であって、必ずしも正解とは限りません。だから、時間をかけて微調整していたんです」。

ニスのコストに関する考察

「機械代や人件費に関しては、工場にある他の機器と比較しても、ごく普通のものでした」とフイゼンガ氏は言っています。「もう少し複雑になるのは、カバー率です。ニスは大きな消耗品です。そのため、見積もりでは、低・中・高のカバー率を推測してもらうことがよくありました」。

「一般的に、私たちが正しい仕事をし、”Less-is-More “のアプローチを売りにしている場合、スプレッドシートに記載されているよりも少ない量で低カバレッジを実現していることがよくありました。例えば、スプレッドシートで20%程度とした場合、実際に作業を行い、MGIの計算機を見ると、1%から2%のカバー率で作業している項目があることがよくわかります。だから、見積もりにはかなりの利益が含まれていて、それでもほとんどのお客さまにとってかなり手頃な価格になったんです」。

マット・レッドベア氏は、一般印刷、商業印刷、大判印刷を扱うフロリダ州フォートローダデールのブルーオーシャン・プレス社で、デザイナーとMGI JetVarnish 3Dのオペレーターを兼務しています。

加飾の見積もりは、メインの企業ビジネスソフトのモジュールとして実行されています。

「デジタル加飾に関しては、通常の見積もりとは完全に別項目として検討されます」と彼は言っています。「私たちは、単にカバー率で判断しているわけではありません。何回パスを通すか、シートサイズは何か、ニスはあるか、箔はあるかなしか、などです」。

用紙の選択も実行可能性と作業時間には欠かせません。

「先日、非常に多孔質な用紙を使った仕事がありました」とレッドベア氏が言います。「その用紙はデジタル対応紙だったので、我が社のiGenでは良好な印刷ができました。しかし、その上に箔やニスを塗ろうとすると、紙の質感が現れてしまいます。質感を得られることが良いこともありますが、この機械で普通にできるような滑らかな仕事をしたいのであれば、工夫が必要です。見積もりアプリではわからない、さまざまな変数があるのです」。

「多分、見積もりで一般化するだけでも十分だと思うので、もしそのような特殊な用紙が必要な場合は、見積もりを進める前に加飾テストを行い、オペレーターからどうすればうまくいくかをフィードバックしなければなりません」。

専用の見積もりシステムが進化しています。

この点について、英国の老舗MIS開発会社であるサースターン社の共同経営者、キース・マクマートリー氏に質問してみました。

「MIS製品はこの10年で大きく進化し、その多くがサースターン社のように、新しいプロセスが出てきてもそれに対応できるような構成が可能になっています」と述べています。「具体的な機能を作ることもありますが、それよりもセットアップやコンサルティングをすることが多いですね。当社のお客様は、以前からこのような仕上がりのお見積もりをされています」。

インクジェット加飾機のコスト計算は、デジタルカラー印刷機と共通する部分が多いのですが、見積もりで対応しなければならない違いもあります。

「これが重要なポイントだと思います」とマクマートリーは言う。「これらのプロセスの多くは、伝統的な作業のバリエーションです。サースターン社で言えば、基本的な印刷のための機械を作り、必要な仕上げのためにさらにバリエーションを増やし、2パス、3パス、4パスに対応させるということです」。

「ニスを塗ったり、カバー率を変えたりすることは、多くのMISソリューションにとって重要なことです。マルチパス方式は、さまざまな構成のマシンを作ることで対応できます。しかし、それは既存の機能の操作であり、複数のマシンを作成することなく自動的に処理できる特別に設計されたソリューションとは異なると言ってよいでしょう」。

「私たちは、新しいTharstern Cloud MISにこのための特別な機能を開発しました。製品仕様の一部として盛り上げ効果の要件を指定するだけで、見積りがさらに簡単になり、MISは、盛り上げ効果やエンボス加工タイプの仕上げを行うためには製造時間を延長する日宇洋画あることを知っています 」。

その他のデジタルプロセスのコスト計算

デジタル加飾プロセスは、インクジェットシステムだけが使われているわけではありません。デジタル・トナー印刷機では、5色目として加飾・オプションを提供するものが増えています。メタライズされた基材の上に不透明な白の下地を印刷すると、コストはかかりますが素晴らしい結果を得ることができます。昔からある方法ですが、ヒーターとフォイルアプリケーターしか必要としないフォイルオーバー・トナー方式や、最近のフォイルオーバー・ラミネート方式(スリークイングと呼ばれることもあります)、マイルドに改良された熱フィルムラミネーターを使用してフルカラー印刷の上にフォイル効果を与える方法などがあります。

それぞれ独自の原価計算や消耗品、資本設備がありますが、インクジェット専用機ほど複雑で高価なものはありません。一方、インクジェットやその他のデジタル印刷機には、独自のデジタルフロントエンドがあり、実際のコストを事前に予測できる利点があります。このコストは、単純なスプレッドシートから完全なMIS/ERPシステムまで、見積もりと原価計算の両方のシステムに供給することが可能です。

メインストリーム化の初期兆候?

デジタル加飾の初期には、見積もり戦略は主に従来のアナログ価格と同じような価格にすることでした。しばしば、ユーザーは自分たちの工程がデジタルであることを秘密にし、スクリーンと金型の代金を請求し、その差額を懐に入れていました。この戦略は、市場がまだこれらの新しい技術について学んでいないことを最大限に利用し、デジタルでもアナログと同じ料金を請求することで、この分野での先行者利益を得ることに成功したのでした。

しかし、この分野における様々なOEMプレイヤーの進化、エージェンシーの認知度の向上、そしてユーザーからの一貫したマーケティング努力により、デジタル加飾を施した作品に対する新しい価格マトリックスが有機的に発展してきました。

デジタル加飾の再販市場価格は、ここ数年、従来のアナログ価格と比較して低下していますが、ユーザーからは、ブランド側からの市場要求の高まり、技術的機能への精通、デジタル加飾の機能に対するボリュームの増加などが報告されています。

これは、デジタル加飾がいよいよ主流になる兆しなのかもしれませんね。いかがでしょうか?

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