センサリー印刷とは ?
見て!触って! 感じて!って、印刷物自体が消費者の感覚や感性に働きかける加飾印刷をセンサリー印刷(感性印刷)と呼びたいと思います。そのような言葉や印刷分野が確立しているわけではありません。が、製品やサービスの機能による差別化が難しくなっているなか、消費者の感覚に訴え、消費者行動への効果的な働きかけを行うことを意図した感性ベースの印刷=センサリー印刷が今後注目されると考えています。
すでにマーケティングの世界では「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」すべてに注目して消費者の五感に訴えることを主眼とする、感覚マーケティング(sensory marketing)の有効性に関する認識が高まっています。また「視覚」や「触覚」と消費者の購買行動に注目した研究もされており、これらの研究を基にしたセンサリー印刷を活用することでDMやPOP、ラベル、パッケージへの視認率、誘因率を高め、購入機会を高め、またクライアントがより大きなブランドの魅力を構築するのを支援することができます。
このサイトではその研究や事例を簡単に紹介いたします。
「感覚マーケティング」(Sensory Marketing)
近年マーケティングの世界では、消費者の五感に訴えることを主眼とする、感覚マーケティング(sensory marketing)の有効性に関する認識が高まっています。この領域で数多くの研究を行っているミシガン大学のクリシュナ教授は、感覚マーケティングを「消費者の感覚に訴えることによって、彼らの知覚、判断、そして行動に影響を与えるマーケティング」と定義しています(注1)。
(注1:出典『Customer Sense』 Aradhna Krishna(2013) 邦題『感覚マーケティング』
平木いくみ 石川裕明 外川拓 訳(2016)有斐閣)
人間の購買心理では一般的に感覚レジスターに入った情報が「認知(attention)」、「関心(interest)」、「欲求(desire)」、「記憶(memory)」、「行動(action)」という情報処理プロセスをたどります(AIDMAモデル)。
クリシュナ教授は、感覚マーケティングにより感覚レジスターで受け取った刺激がそのまま消費者を動かすこと(青い点線の経路)があるということを言っています。消費者が店内で衝動買いをする非計画購買がなぜ起こるかこれで説明できますね。特に視覚・触覚に訴えることができるセンサリー印刷は、この非計画購買を促す効果が期待できます。これらの効果に関し、タッチに関する研究、箔の効果に関する研究を簡単に紹介致します。
タッチ(触覚)の科学
タッチ、つまり手で自由に触れることによって生じる対象の知覚を特に「ハプティック(haptic)知覚」と呼びます。購買行動に関連する大半の触覚情報は手を通じて得られるため、これまでの触覚に関するマーケティング研究はハプティック知覚に焦点を当てたものが多くあります。
触覚は、視覚に次いで商品評価に影響があると言われています。海外の食品スーパーで行われた調査では、接触をうながす内容のPOP広告を設置しただけで、消費者の非計画購買が促されたという結果が出ています。
また、別の研究では、消費者が商品に接触しながら評価を下した場合、接触せずに評価を下した場合に比べ、推定価格も高くなり、所有意識も高まるという報告もされています。商品への接触は購入の可能性を高めるということなのです。 以下にこれらの研究のいくつかを紹介いたします。
製品へのちょっとした接触が製品に対する心理的所有意識に与える影響
( The Effect of Mere Touch on Perceived Ownership, Peck and Shu, 2009 )
結論:製品への接触は、製品に対する心理的所有意識を高める。また、心理的所有意識が高いほど、製品の価値をより高く評価する。
【主な調査結果】
人間は製品に触れることで、その製品に個人的な繋がりを感じる。
タッチ要素が製品に関する情報を提供しない場合でも、その製品に触れた経験は購買に影響を与える可能性がある。
タッチが感覚的フィードバックを提供すると、製品の評価と感情的な反応が増加する。
タッチすると統計的に心理的所有意識が増加する。
心理的所有意識が高いほど、購入する可能性が高くなる。
触り心地がいい:タッチに対する顧客の感情的な反応と説得への影響
( It Just Feels Good: Customers Affective Response to Touch and its Influence on Persuasion Peck and Wiggins, 2006 )
製品以外の触覚要素が消費者の意思決定に与える影響を検討
結論:製品以外の触覚要素によって消費者コミュニケーションにおける説得力を高めることができる。こうした効果は、ポジティブな感情をもたらす触覚要素の場合が、また消費者が自ら触れてみたいと思う欲求度が高い場合が、そうでない場合よりも大きい。
【主な調査結果】
タッチのマーケティングへの影響は、以前考えられていたよりもはるかに大きい。
製品に触れると自信と感情的な反応が高まる。
感情的な反応が高いほど、広告に対する前向きな態度が高くなる。
製品に関する情報を提供していなくても、タッチの快楽的な側面は説得力がある。
触れると説得力が高まる。
触ったら必ず欲しくなる:衝動買いへの影響
( If I Touch It I Have to Have It: Influences on IMPULSE purchasing Peck and Childers, 2006 )
消費者の接触欲求と接触を促すPOPが非計画購買(衝動買いのことです)に与える影響を検討
結論:消費者が自ら触れてみたいと思う欲求度が高いほど、製品の非計画購買の水準が高い。接触を促すPOPがある場合が無い場合に比べ製品の非計画購買率が高まる。
【主な調査結果】
ほぼすべての非計画購買は、店内で何かを触ったり、聞いたり、嗅いだりした結果である。
触覚は衝動買いに強く関連している。
箔が商品に与える効果
デジタル情報に比べ、印刷物を「感性ベース」の情報媒体として使用する新しいタイプのセンサリー印刷では 、触覚と箔の光学的特殊効果でより強く記憶に残る影響を生み出すことができます。
例えば箔押しを使った次のような調査結果があります。
1)製品を認識するのに要する時間
箔なしのパッケージ:> 3.6秒 箔付きパッケージ:2秒
2)製品を注視した合計時間
箔なしのパッケージ:〜1.6秒 箔付きパッケージ:〜1.93秒
3)誘引率を上げる
箔で加飾されたパッケージは、視認性を向上させることなく、同じパッケージよりも最大2.5倍誘引率を高めます。
4)より高い品質の認識
特殊印刷と加飾を施したパッケージは、46%を超える品質の認識を実現
5)高い製品評価
個人が商品に集中する時間が長いほど、その商品を選択する可能性が高くなり、好意的な評価が高くなります。
出典:2013年、米国Foil & Speciality Effect Associationから委託された調査。 「棚の存在に対する高視認性の強化の影響に関する最初の研究」
つまり箔を使った商品は箔を使わない商品に比べ
① 目に留まりやすく、
② より注視され、
③ そのため商品を手に取る確率が上がり、
④ 触ることで品質に対する評価が高まりその結果
⑤ 商品を買う確率が高まる。その上
⑥ ブランドに好印象を持つ、
という調査結果でした。