日本の印刷会社 研文社はデジタル印刷+デジタル加飾技術で印刷の表現を広げ、印刷の限界を突破しようとしています。

2022-06-21 :MGI事例紹介(インタビュー記事)

研文社のデジタル加飾4作品が米国FSEAの今年のGold Leaf Awardsを受賞しました。同社が短期間にいかにそのデジタル加飾技術を高め、優れた作品を創出するようになったか、網野社長へのインタビューと事例を交えてレポートします。

株式会社 研文社概要

所在地:日本 東京都新宿区

業種: 商業印刷

設立: 1946年

従業員:220人

MGI JETvarnish 3DL設置:2020年10月

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Gold Leaf Award受賞作品 クラフトビールラベル”PIT BULL”

印刷の表現を広げる新技術への取り組み

創立75周年を迎える研文社は、時代に応じて技術を革新しサービスを進化させています。同社は1999年、付加価値印刷に活用すべく当時は日本に未だ紹介されていなかった高精彩・広色域印刷のパントン・ヘキサクロームに取り組みを始めました。独自に情報収集・研究開発を始め、2000年にパントン社会長の日本訪問時、研文社が印刷したヘキサクロームのサンプル説明を行ったところ技術が優れていると認められ、米国で正式な指導を受けることになりました。その結果、日本で唯一のパントン社認定印刷会社となりました。またパントン社にマーケティングの支援を要請された研文社の網野社長はヘキサクローム・コンソーシアムを立ち上げ、日本でのヘキサクローム普及に協力しました。

JETvernishとの出会い

印刷の表現を広げ、印刷の限界を突破することを常に追い求めている網野社長はDrupa 2016で厚盛ニスと箔押しの両方ができるJETvernish 3Dに始めて出会いました。厚盛ニスの技術は既に知られていたものの、デジタル箔は新しい技術であり、この2つの機能があればいろいろなチャレンジができると考え、いつかJETvernishを自社に置きたいと思うようになりました。

その後、紙の印刷物の価値を見直すための新しいビジネスモデル・事業サービスを構築し、印刷物の持つ価値を最大限に高めるための設備や技術が必要と判断し、2020年、都心にある本社工場のオフセット機を排出し、デジタルUV印刷機IS29+デジタル加飾機JETvernish 3Dを設置することにしました。またお客様を招いて価値の高い印刷物を一緒に制作するラボのような場所にするため、名称を本社工場からデジタルオンデマンドセンターに変えました。JETvernish 3Dは2020年10月に同センターに設置されました。

研文社 代表取締役社長 網野勝彦様へのインタビュー

Q:研文社では2020年12月にデジタル加飾に関する研修を(株)RYOから受けられていますが、目的はなんでしたか。またその成果はどのようなものでしたか?

A:JETvernishを導入したばかりで、社内では未だ認知されていない時期でした。研文社ではエンドユーザーと直接取引を前提にしているので、セールスがお客様にしっかり提案できるようにするために最初からセールスのシナリオを考え、ツールやプレゼンを用意して教育するというプロセスが必要と考えました。

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研文社 代表取締役社長 網野勝彦様

スタート時点で十分な準備が用意できるよう、(株)RYOに広告代理店向けにセンサリー印刷を紹介するプレゼン作成用コンテンツの提供と、セールス向けセンサリー印刷のトレーニングを求めました。成果はデジタル加飾サービス提供の準備が短期間で進んだことです。自社で独自に用意していたらもっと時間がかかったと思います。

Q:研修から得た最も重要な上位3つの情報はなんでしたか?

A:

  • センサリー・マーケティングの切り口は、自分たちでは全く想像もしていなかったので重要な情報でした。AIDMAモデルと言われる一般の情報プロセスに対し、感覚レジスターで受け取った刺激がそのまま消費者を動かすことがある、という考え方が日本ではあまり語られていません。デジタル加飾の提案は、そういうところからお客様に説明していく必要があります。加飾の見栄えだけを語ると、コストが高いという話になってしまいがちです。
  • 経営者やデザイナー向けの技術情報が役に立ちました。例えばグレイスケールの諧調を変えると同じ平面上のニス厚を変えられることなど、クリエイティブを立体的に考えることができるようになりました。
  • 直ぐにプレゼンやマーケティング資料に使えるサンプル画像等のコンテンツ情報が役に立ちました。

Q:このような研修を他の会社にも勧めたいと思いますか?

積極的にデジタル加飾を提案できるようにするために研修は必要だと思います。例えば広告代理店向けに営業準備をすることを最初の段階でしっかりと整えないと、話を聞いてもらうことも簡単ではありません。デジタル加飾は未だ認知がされていないので、待っていても仕事は回ってきません。セールスが提案をしっかりできるようにしておかないと、設備を入れても、動かすことができません。

Q:この度は米国・箔&特殊効果協会のアワード受賞おめでとうございます。研文社はどのようにして短期間にデジタル加飾の技術力を高め、Gold Leaf Awardsを受賞するような優れた作品を創出できるようになったのですか?

A:生産の現場は基本、自由にやらせています。聞いてみるとニスや箔を載せる条件をいろいろ変え、多くの失敗を経た結果シズル感の際立つ部分ニスや、かすれのある箔押し等、いろいろな技を会得しています。またJETvernishとトナーとの相性なども自分たちでトライし、使える・使えない情報を揃えています。箔に関しても多様な箔をテストし多くの情報を得ていろいろなシーンに応じた箔の種類、使い方情報を纏めています。更にオペレーターと社内のデザイナーが非常に密にコミュニケーションを図っており、お互いにマシンの限界設定条件を理解しながら作品作りができるという点が強みです。

事例紹介

研文社ではデジタル加飾情報をメルマガやDM、またSNSで発信すると共に、継続的に作成しているプロモーションツールを活用し、お客様にデジタル加飾の紹介や提案をしながら営業活動を進めています。その中で企画提案やサンプル作成から受注獲得に繋がった事例を紹介します。

三井住友信託銀行エンゲージメント向上DM(2022年度全日本DM大賞入選)

住宅ローン利用者の大半はそこで止まってしまい、それ以外の金融商品の利用がありません。そこで高所得者層にセグメントを絞って更なるエンゲージメントとLTV向上の目的でDMを配布することにしました。挨拶状に香り袋を付けたり、デジタル加飾で製作した紙製フォトフレーム等丁寧なコミュニケーションを重視したDMを発送しました。DMには商品の案内等セールス的要素は入れていません。DM到着のタイミングでフォローコール等も実施し、結果、不動産投資や別荘購入の相談等の成果に繋がり銀行からは高評価を得ました。フィジカルな紙メディアで五感に訴えるデジタル加飾の効果を実証できました。

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新興出版社啓林館イベント来場ノベルティ

小学生向けファッション誌「ニコ☆プチ」が主催のイベント「プチ☆コレ2022」の物販ブースに出店。同社の書籍を購入したお客様にデジタル加飾を施した来場者限定オリジナルブックカバーをプレゼントしました。更に推しカバー選手権と題した投票型にして集客率を高めました。金型が必要ないため4種類のブックカバーを作成し、用意することができました。売上・集客率アップに貢献しました。

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女子美術大学大学グッズ「ポストカード」

女子美術大学に加飾ポストカード製作の提案を行い、サンプル作成の後、大学関連会社の株式会社アイシスより受注しました。大学美術館で所蔵している着物の金糸の部分や、絵画作品の立体的に見せたい部分をデジタル加飾機で表現しました。大学グッズとして配布される他、一般の方に向け大学付属ミュージアムショップでも販売しています。

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研文社では、デジタル印刷+デジタル加飾をブランドとお客様を繋ぐ新たなコミュニケーションツールと位置づけ、印刷の限界を突破するような創造力豊かで感性に訴える印刷表現の実現にチャレンジし続けています。

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