デジタル加飾の見積もりについて、米国ポストプレス・スペシャリティーズ社のボーエン・グリフィット氏に聞きました。

2023-01-05:デジタル加飾業界情報(Taktiful社ブログ引用) 

「デザイナーにLess is Moreを理解してもらうことが重要」、「バリアブルフォイルは、ゲームチェンジャー」といった経験豊かな話題一杯のインタビュー前編です。

ポストプレス・スペシャリティズ社概要

所在地:米国ミズーリ州 インディペンデンス

業種: 印刷仕上げ加工

設立: 1992年

従業員: 100人

MGI JETvarnish 3D Classic設置:2018年

MGI JETvernish 3D Evo設置:2022年3月

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ボーエン・グリフィット氏/ポストプレス・スペシャリティーズ社インタビュー

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ボーエン・グリフィット氏

ボーエン・グリフィット氏: ボーエン・グリフィットです。ポストプレス・スペシャリティーズ社で見積もり担当と事務長を務めています。この会社に勤めて22年になります。私たちはミズーリ州カンザスシティで印刷物の仕上げ加工を行っている会社です。

私たちは他社のプロジェクトを仕上げることを専門としています。私たちは、あくまでもフィニッシャーです。印刷は一切行いません。私たちは多くの加飾のオプションを持っています。MGIを使ったデジタル加飾機能に加えて、従来のフォイルスタンピング、フォイルエンボス、エンボス、ラミネート加工を提供します。

ケビン・アバジェル: デジタル加飾が初めて登場したとき、価格設定は混とんとしていましたね。デジタル加飾には金型が無いのに金型代をチャージしたりとんでもない価格を請求したり。でも、今では、デジタル加飾はますます主流になりつつあります。デジタルとアナログの違いを理解する層が生まれつつあるのです。今日は、このような新しい市場の価格設定と、従来技術との違いについてお伺いしたいと思います。

グリフィット氏: なるほど。市場には、デジタルと従来の加飾という区分けがあります。デジタル加飾は、数年前に米国内で最初の5台のうちの1台だったJETvernish 3D+iFoilマシンで始めました。私たちは印刷後加工業者として、商業印刷会社から仕事を受けています。全国で200社ほどと取引しています。そのうち55社がビジネスの中核を担っています。これら200社以外の印刷会社の小さな仕事も請け負っています。デジタルフォイル市場に参入した当初、私たちはアーリーアダプターでした。デジタルUVオプションなどに対応する箔を見つけるのは、正直言って大変でした。もうひとつの課題は、私たちのクライアントである印刷会社に、デジタル加飾という新しい技術を受け入れてもらうことでした。見積もりも従来のUVや箔のように、画像領域やブロック単位で価格を設定するという考え方がありますが、デジタル加飾は消費主導型、つまり使用量に応じた見積もりという概念を理解してもらうのは難しいことでした。

デジタル加飾では見積もる前に入稿データを入手することが重要なんです。従来のフラットフォイルスタンピングでは、銅製の金型を使って、平方インチ単位でコストを計算します。しかし、デジタル加飾では、そうではありません。見積もりはニスの消費量に基づいて計算されるのです。

それがスピードの原動力にもなります。面積ではなくミクロン単位の高さなどが重要で、従来の加飾と比べると、かなり違っていて。どう言えばいいんだろう……カバー率に左右されないというか。

アバジェル氏: カバー率だけに影響されないんですね。

グリフィット氏: そうですね。そして、私たちのクライアントである印刷会社にそれを理解してもらうことは、ちょっとした挑戦でした。

サイモン・エコレス氏: それは私が質問しようとしたことの一部なのですが、デジタル・アートワークを見積もりプロセスに使用しているのでしょうか?特に外注のフィニッシャーとしては、印刷会社の顧客がその顧客から受け取ったファイルを手に入れなければなりませんよね。お客様のデザイナーが加飾に際し、何をどうすればいいかを知っていることを期待していますか?

グリフィット氏: ある割合で知っている方もいます。私たちは、他のクライアントより多くデジタル加飾を購入しているクライアントを抱えています。デジタル加飾を受け入れているクライアントは、正確な見積もりをするために必要なことをより正確に理解しています。

デザイナーに「Less is More」を理解してもらうことが重要

グリフィット氏: 今でも、デジタルUVで30%のカバレッジが必要だとおっしゃるクライアントが結構いらっしゃいます。しかし、デジタル加飾を理解するならば、「Less is More、つまり少ない方がより効果的」であり、実際にある部分にハイライトを入れ、UVカバレッジを少なくすれば、よりコントラストが強くなります。例えば、大きなUVブロックを置かなくても、多くの場合、より見栄えのする製品を得ることができるのです。ケビン、あなたはこの問題を誰よりもよく理解していると思います。

アバジェル氏: 私はこのことを何年も説いてきました。Less is Moreでより速く、場合によっては明らかにページ単価を下げることができるだけでなく、より良い製品を提供することができます。ですから、デザイナーに「Less is More」の原則を正確に教えることが、成功や導入につながる重要な点の一つだと考えています。デザイナーにこのことを教えることは、とても重要なことなのです。

グリフィット氏: これは、私たちの最大の課題のひとつでした。というのも、従来の加飾はUVをスクリーン印刷してブロック状にしたものなので、「UVのブロックを置いて、ページの真ん中に大きなコントラストを作りたい」と考える人が多いからです。

一方MGIの仕組みはデジタル・インクジェット・スタイルのセットアップなのです。そのため大きなブロックに塗るのは効率的ではありません。そう、つまり、材料を大量に消費することになるんです。そのため、小さい面積に塗ったほうがいいのです。

デジタル加飾とアナログ加飾

アバジェル氏: 確かにそうですね。デジタル加飾とアナログ加飾では、採用率に大きな違いはありますか?デジタルにするかアナログにするか、どのように決めるのでしょうか?典型的なプロセスを教えてください。

グリフィット氏: 通常、クライアントが私たちに依頼してくるのは、明らかにプロジェクトがある場合です。彼らはすでに何をしたいかを考えています。デジタル技術を導入している企業の中には、初めからデジタル技術を使いたいという考えの方もいます。

それ例外の場合は、私たちの裁量によります。時には、私たちの機器やプロジェクトを見て、従来のフォイルスタンパーと比較して、デジタルマシンの方が適していると判断することもあります。その上で、クライアントをどちらかの方向に誘導するようにします。私たちが気づいたのは、商業印刷の印刷後処理業者として大雑把に物事を判断するのは難しいということです。200社ものクライアントから仕事を受注しているのですが、その各社が同じ機器を使用しているわけではありません。そのため、デジタル印刷機の基材やその表面の状態が異なるなど、いくつもの課題が発生します。

それらをクライアントに説明するのは、ちょっと大変なことなのです。記事を読んで、「デジタルUVを使いたい」と言う人もいると思います。そして、見積もり依頼が来るのですが、その印刷物の基材は、例えば、コーティングされていない用紙だったりします。これはデジタル印刷に適さないわけです。そこで、私たちは先方と話をして、表面が重要であることを説明しなければなりません。コーティングされたシートが必要なんです。印刷した後に水性コーティングを施したシートが望ましく、あるいはフィルムラミネートを施したものの、どちらか一方が必要です、と。名刺に加飾を施す場合、非コーティングではうまくいかないと説明するのは大変です。なぜなら、名刺は伝統的にずっと非コーティングのカバー紙が使われてきたのですから。それを、デジタル加飾を低コストで施すことができ、より高い価値を得られるコーティングされたカバー紙にするよう説得するのは、大変難しいことです。

バリアブルフォイル(可変箔)は、ゲームチェンジャー

アバジェル氏: デジタル加飾にはデジタルならではの要望があることが重要なんですね。場合によっては、デジタルUVやデジタル箔が欲しいと、具体的に聞いてくる人もいますよね。そのような、特にデジタル加飾と指定して依頼する人が増えているのでしょうか?それとも、リクエストの数はかなり安定しているのでしょうか。

グリフィット氏: デジタル加飾の要望は増えています。MGIやScodixのような機械が発売され、人々はデジタル技術を積極的に受け入れています。アーリーアダプターと呼ばれる人たちは、バリアブルフォイル(可変箔)ができることで得られる付加価値を求めています。バリアブルフォイルは、ゲームチェンジャーです。箔押しでパーソナライゼーションができることは、ゲームを変えると言っても過言ではありません。

アバジェル氏: そうですか。でも、質問があるのですが、つい最近まで存在しなかったサービスのバリアブルデータのエンボス箔にどのように課金しているのですか?

グリフィット氏: ファイルのセットアップには少し時間がかかりますが、正直なところ、それについては特に請求していません。ニスの消費量のこととか、生産速度の問題などもあります。本当はもっとチャージしても良いはずなのに、私たちはそうしていません。私たちは、バリアブルではないデジタルフォイルの仕事を扱うのとほとんど同じように、バリアブルの仕事を扱ってしまっています。

一方、従来の箔押し加工では、複数の金型を購入する必要があり、セットアップも必要です。そのため、従来の箔押し加工でバリアブルフォイルの生産は実際不可能なのです。

エコレス氏: バリアブルフォイルの代表的な用途にはどんなものがありますか?

グリフィット氏: ダイレクトメールやデジタルフォイルで名前を入れパーソナライズされたハガキなどが、私たちが見たことのあるものです。

アバジェル氏: そうですね。あとアメリカン・エキスプレスのように、宣伝のために紙のカードにデジタルエンボス箔で個人名と番号を入れて送り、「アメリカン・エキスプレスに申し込んでください」というプロモーションをしているのを見たことがあります。

そのようにパーソナライズされているので、とても高額な料金をチャージしています。しかし、価格設定を決定するのは顧客である印刷業者です。

グリフィット氏: ええ、その通りです。また、我々の問題の一つにデザイナーと直接話をできないことがあります。

私たちは印刷の後加工業者です。私たちのできることは、印刷会社の営業マンに私たちの能力を売り込むことです。営業マンはそれを広告代理店やブランド・クライアントに持っていくのです。

アバジェル氏: それがプッシュ型マーケティングです。クライアントに提案しプッシュするんです。そのクライアントが自分のクライアントにプッシュしてくれればいいのですが。Taktiful社では皆さんの先にいる、ブランドに直接アプローチして、デジタル加飾の使い方を教育することを実践しています。。ですから、あなたの課題は理解できます。

デジタル加飾のメリット

エコレス氏: 印刷会社の営業担当者と協力して顧客に働きかけようと考えているのですが、そのメッセージは伝わっているのでしょうか。それとも顧客は、デジタル加飾ができることは理解し、コストへの影響も理解しているのでしょうか。

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50部しか使わない金型に高い費用を払う必要がないことはデジタル加飾のコスト面での大きなメリットです。来年も同じ金型を使うようにする必要もありません。これもコスト面でのメリットに違いありませんが、それを見積もりに組み込むことも必要でしょうか。デザイナーや印刷会社はそのことを理解しているのでしょうか。それとも、彼らにこのことを説明し続けなければならないことなのでしょうか。

グリフィット氏: お客様は理解し始めていて、そのような市場において、私たちは間違いなく成長を実感しています。

お客様の理解を得るのに時間はかかったのですが、受け入れ態勢が整ってきて、採用していただいています。確かに要望は増えてきていますね。それでもまだ私たちに課題がある部分もあれば、クライアントに課題がある部分もあります。

人々にマーケティングを通して、変化してもらうことは明らかに難しいことですが、ですから、企業としてマーケティングを続ければなりません。しかし、人々は間違いなくこの方法を採用し、この方法によってもたらされるチャンスに興奮しています。製造リードタイムは短くなりますし、金型を買わずに済むので初期費用が少なくて済みます。

金型を使って何時間もかけて準備していたのが、15分でできるようになったのですから。だから、みんなこのシステムを採用し、その可能性に興奮しているのです。

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エコレス氏: 御社が提供しているサービスを明確したいのですが、従来の箔押しやエンボスを提供すると共に、JETvernishによるデジタル加飾を提供している。この理解は正しいですか?

グリフィット氏: そうです。

アバジェル氏: 2台目を買ったばかりでしょう?

グリフィット氏: はい。今年初めに導入したばかりの新型JETvernish 3D Evoがあります。デジタル加飾は、基本的にMGIマシンで行っています。

[ここまでインタビューの前編終了。次週はインタビューの後編をお伝えします]

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