デジタル加飾機能のマーケティングを成功させるために。

2022-12-22:デジタル加飾業界情報(Taktiful社Kevin Abergel氏寄稿) 

Taktiful社のKevin Abergel氏がデジタル加飾のマーケティングに関して、デジタル加飾サービスを提供している米国の4つの印刷会社にインタビューしました。

デジタル加飾機能のマーケティング

PrintingNews4

私は長年にわたり、デジタル加飾機のユーザーに対して、当初は非常に新しいコンセプトであったデジタル加飾というものを、彼らの既存顧客や潜在顧客にどのように売り込むかについて助言してきました。これは、MGI社でインクジェット・ベースのデジタルニスとデジタル箔システムのJETvarnishシリーズを開発する際の私の役割の一部でした。

そして、昨年、あらゆる種類のデジタル加飾のあらゆる側面に関するコンサルティングを提供するTaktiful社を設立した際に、その助言の幅を広げました。

10年前の私は、ほとんど正しい道を歩んでいたと思うのですが、一つだけ、正しい理由でありながら、間違っていたと思うことがあります。それが何であったかは、最後までお読みください。

今年のLabelExpoとPrinting Unitedの展示会では、デジタル加飾の話題で持ちきりだったので、既存のデジタル加飾機ユーザーに対して、どのようにデジタル加飾サービスを販売し、彼らの顧客がこれをどの程度認知しているのかを聞く良い機会になりました。

今回は、MGI社やScodix社のインクジェット方式によるUVニスや箔を使ったデジタル加飾を行っている米国のサービスプロバイダー4社にお話を伺いました。

1)ミネソタ州ミネアポリスにあるシュガー・プリントSugar Print社の創設者兼オーナーであるダーレン・ケニング氏Darren Kenningは、2年前に従来から行っていた印刷仕上げのアウトソース会社Kenning Outsource社からスピンオフしてデジタル加飾専門会社Sugar Print社を設立しました。

ダーレン・ケニング氏

この会社はScodix社のデジタル加飾機を使用しています。

マット・グリア氏

2)アラバマ州バーミンガムにあるDMSカラー社のCEOであるマット・グリア氏Matt Greerは、パッケージング、企業向け、プロモーション、大判のサービスを提供しており、4年前にMGI JETvarnish機2台でデジタル加飾に乗り出しました。

3)マイケル・ディロン氏Michael Dillonはミネソタ州ミネアポリスにあるマイヤーズ社Meyers社の最高販売責任者です。同社は主にカートンや段ボールのコンバージョンとラベルに重点を置いています。

マイケル・ディロン氏

その他にカートンや段ボールのディスプレイ加工、感圧ラベル、小売ディスプレイなどを行う75年の歴史を持つ企業で、MGI JETvarnishをちょうど1年前に導入しました。

ジョーン・ヘンリー・ルギエリ氏

4)ジョーン・ヘンリー・ルギエリ氏JohnHenry Ruggieri氏はフロリダ州オーランドにある、印刷を中心としたマルチチャンネル印刷とマーケティングソリューションの会社SunDance Marketing Solutions社のマネージングディレクターです。

この会社は5年前に中古のMGI JETvarnishデジタル加飾ユニットを購入しましたが、それ以前はスリーキング・フォイル・ラミネートを提供していました。

まず、デジタル加飾のマーケティングについて、それぞれの成功体験と、その経験を踏まえての工夫について聞いてみました。

ターゲットに合わせたメッセージ

DMS社は、4年前に最初のデジタル加飾ユニットを導入し、小型カートンへの参入を開始しました。DMS社は、成長する合法大麻とCBD(カンナビジオール)市場のパッケージングにニッチ市場を見出したと、マット・グリア氏は言っています。「デジタル印刷についてお客様に説明するとき、小ロットでの印刷の利点だけでなく、持続可能性や、デジタル印刷がいかに環境に優しく、二酸化炭素排出量を削減できるかについてもお話ししています」。

「私たちは、それをメッセージとしてパッケージ化し、ターゲットとする市場に向けて発信しているのです。もし私がデジタル加飾を使用してグリーティングカードやバースデーカードを作ろうとするならば、その特定の顧客層に向けたマーケティング・メッセージとともに、チャネルやWeb-to-printプラットフォームを開発する必要があると考えています」。

「未だあまり知られていないデジタル加飾の認知度を確実に高める方法の 1 つは、それがどのように活用できるかを理解し、適切なマーケティング・メッセージと共にターゲット顧客に伝えることです」。

DMS社は、どのようにマーケティング・メッセージを発信しているのでしょうか?

「私たちは、ゲリラ・マーケティング(*)に大きく依存しています」とグリア氏は言います。「全米で年間20〜25のイベントに参加し、業界別の会議やコンベンションにブースを出展しています。私たちの名前を知ってもらうことで、会話を始めることができるのです」。

*ゲリラ・マーケティングとは低コストで慣例に囚われない手段(落書、フラッシュモブ等)を使った広告戦略であり、製品やアイデアを売り込むために度々局所的な場所もしくはインターネット上の大規模ネットワークで行われる(ウィキペディア)。

顧客のニーズを調査する

マイヤーズ社のマイケル・ディロン氏も、マーケティング・メッセージは、クライアントの業務内容を反映したものにする必要があると述べています。

「マス・マーケティングを行うと同時に、機会があれば、よりターゲットを絞ったマーケティングを行うべきでしょう」。

本質的に「輝き」を生み出すという観点から、加飾の可能性を誇示するためにデジタル加飾を使用することがあります。多くの場合、これは遠くから通路や店内の誰かの注意を引き、近づいてパッケージを手に取ったり、製品を手に取ったりしてもらうために使います。

「人々の注意を引き、その製品に触れてもらい、そのブランドを初めて知ってもらう必要がある新興ブランドに対するマーケティングと、特定の製品を強調したい確立されたブランドに対するマーケティングでは、アプローチの仕方が異なります」。

ディロン氏は、デジタル加飾がどのような用途に使われる可能性があるのか、実際の現場でリサーチすることを勧めています。「店舗で時間をかけて、誰がすでに光沢ニスを使っているか、誰がすでに箔を使っているかを調べ熟知し、これらとはどう違うのか、と考えるのです」。

「デジタル加飾は誰に向いているのか、顧客を分けて考える必要があります。例えば、一般的な健康食品や化粧品のブランドには、超高級化粧品と同じような使い方はできません。また、食品店やスポーツ・アウトドア企業など、それぞれの企業で活用できる方法が異なります。そこで、時間をかけて試行錯誤を重ね、店頭で時間を過ごすことで、異なる客層に合わせたより良い方法を学んでいくのです」。

作品を見せる

Sugar Print社のダーレン・ケニング氏は、顧客の手元に成果物、サンプルを残すことが効果的であると言っています。

「私たちはさまざまな効果のサンプルを集め、デジタル箔の作成方法の概要を説明したプレゼンテーションフォルダーを作成し、その実際に見て触って感じることのできるフォルダーを見込み客に手渡しています」。

他のパネルメンバーも同様の “ルックブック “を作成しています。

以前のwhattheythinkの記事で、加飾のためのデザインについて、画面上での加飾の表示とプレビューの問題について触れました。ケニング氏はこの問題解決にも取り組んでいます。

「ウェブサイトでは、エフェクトのクローズアップをかなりうまく見せていると思います」と、彼は言います。「適切な照明のもとでクローズアップすることで、加飾をより効果的に見せることができます。誰かがあなたのウェブサイトを見たり、名刺を見たりして、その視覚要素に「わぁ、すごい!」と言ってくれるでしょう。

試行錯誤

ジョーン・ヘンリー・ルギエリ氏は、SunDance社が初めてスリーキング(ヒートローラー箔加工)に参入したとき、マーケティングをうまくやるのに時間がかかったことを認めています。

「私たちは、自分たちでブランド化しようとしました。しかし、大手のクライアントが使ってくれた以外は、あまりうまくいきませんでした」。

また、当初は販売チームが販売方法を理解するのに手助けが必要だったと感じています。「私の考えでは、彼らは箔押し加工をするための安価な方法として、このデジタル加飾を提案しているだけでした。しかし、今では、デジタル加飾をソリューションとして販売しているしている花形セールスが数名います。彼らは、箔押を理解し、箔押しを適切な用途に提案しています。でも、価格を下げてコモディティとして販売しているセールスもまだいます」。

「MGI機でのデジタル加飾でも、同じようなことがありました。営業チームに浸透させるため、サンプルに多額の資金を投入しました。今、使っている人たちは、本当に理解してくれています」。

サプライヤーからのサポートは重要だとルギエリ氏は言っています。中古の機械を購入したため、SunDance社はメーカーからの一般的な初期トレーニングや販売・マーケティング支援を受けられなかったと、ルギエリ氏は言います。

果たして、その違いはあったのでしょうか。

「わかりません」とルギエリ氏は言っています。

「でも、違いがあったと思いたい。私たちには優秀なマーケティングチームがいて、何度か宣伝もしたし、サンプルも手に入れた。営業マンにも言えることですが、ツールがあれば、トークトラックがあれば、普通に違いをだせるんです」。

顧客の認知レベル

ルギエリ氏の経験から、デジタル加飾の潜在的な用途に対する顧客の意識レベルについて、また、市場の構築と啓蒙に責任を持つのは誰なのか、サービスプロバイダー、機器サプライヤー、あるいはクリエイターと彼らのブランドの顧客との対話か、という2つ目の質問をしました。

まず、デジタル加飾に関する顧客の認知度を、1(低い)から10(高い)までの数字で評価するよう、各パネリストに尋ねました。ほとんどが2~3と答えたのに対し、メイヤー社Meyersのディロン氏Dillonは「3〜5」と、やや楽観的です。彼は、デジタル加飾という比較的新しい概念に、市場がまだ追いつく必要があると感じているようです。

ルギエリ氏によると、実はお客様によって意識の幅があるそうです。「ディズニーやユニバーサルは8点くらいでしょうか。私のクライアントの中には、7~8点の企業もありますね。でも、もし私がすべてのクライアントの全範囲を見て、それを平均化したらまだ2点でしょう」。

お客様の認知度向上

つまり、デジタル加飾の市場での認知度は未だ低く、これを高めることでこの分野全体が、利益を得ることができるのです。でも、それは誰の仕事なのでしょうか?

ディロン氏は、それは誰もが担うべきものだと言っています。

「この機械を見て、こんなことができるんだと分かったとき、それをブランドに届けたい、まだやっていないことができるんだということを理解してもらいたいと思ったんです。そのためには、私たちの力が必要です。しかし、MGIなどのマシンを作る人たちが、これはこういう仕組みで、だから今までやっていることとは違うんだよ、と説明する立場になることも必要でした。だから、みんなそれぞれに役割があるんです」。

「ブランドによっては、探検する人を抱えていない場合もあります。ですから、もしあなたが、コンサルタント、メーカー、デザインエージェンシーのいずれであっても、ブランドに対してクリエイティブで新しいものを提供したいのであれば、それはあなた自身の責任になります。なぜなら、新しいものをもたらしたいのであれば、それがもたらす影響と、なぜそれを探求すべきなのかを理解してもらわなければならないからです」。

シュガー・プリント社のケニング氏も同意見です。「機器メーカーが、代理店や印刷バイヤーを教育する必要があると思います。そのためには、私たち全員が必要なのです。メーカーも当初はそうしていなかったと思います。それがここ数年で変わってきて、今では広告代理店に働きかけようとしています」。

デジタル加飾用語の標準化

最後に、私のマーケティングの失敗談をお話しします。私は12年間、「おい、聞いてくれ、こうすると良いんだ」と皆に言って回りました。「デジタル加飾のための本当にクールな名前を考え出し、それを自社のブランドとして著作権を設定し、徹底的に売り込むべきだ。デジタル加飾のブランドを立ち上げ、そのシークレット・ソースがあなただけのものであることを証明するのです」と。

当時はそれが良いと思っていました。

しかし、ブランドや代理店のレベルでは、同じ技術・効果を何百種類もの名前で表現することになり、大きな混乱を招いたかもしれません。

今日、デジタル加飾はますます主流になりつつあり、MGI、Scodix、Kurz、Duploなどがインクジェットベースの加飾システムを製造し、一部のトナープレスメーカーは加飾オプション付きの第5、第6ユニットを提供、さらに今日の市場では「なめらかな」ホイルオバートナーやホイルラミネーターがいくつも出てきています。これは市場の成長にとって素晴らしいことですが、市場の認知度という点では課題があります。同じような効果に対して、異なるブランド名や用語が使われると、新しい顧客は、異なるサービスプロバイダーが提供するものを理解することが難しくなるかもしれません。

一方、ホットスタンプ箔押しなどの伝統的な加飾は、誰もが知っていて、同じ言葉を使っています。

例えば、サンダンス社のルギエリ氏は、一般にスリーク加工と呼ばれるヒートローラー方式の箔オーバーラミネートを採用した際、「サンシャイン」というブランド名を思いついたといいます。今となっては、「大きな間違いであり、市場を混乱させたと思う」と彼は言っています。彼は「ああ、知られたくない、スリーキングという言葉も使いたくない」と思っていました。「でも、市場を混乱させ、営業担当者を混乱させただけでした」と言っています。

米国の箔&特殊効果協会 (FSEA)の派生組織であるデジタル加飾連合Digital Embellishment Alliance (DEA)は、標準的な用語の確立を目標のひとつに掲げています。DEAは、標準化の取り組み、デザイナーへの働きかけ、トレンド分析、ブランド教育などを約束するものです。www.fsea.com で、さらに多くの情報を得ることができます。

###

For more info http://www.mgi-fr.com